神奈川県

イスラム風のドームを持った塔が印象的な横浜税関の庁舎。海の貿易で繁栄したのはやっぱりイスラム教徒だよね、という発想からのデザインらしい。

横浜港周辺には「横浜三塔」と呼ばれる塔を持った建物が三つあり、それぞれキング・クイーン・ジャックと愛称がつけられていた。税関の塔は「クイーン」。最初の設計では高さ47mだったが、日本の表玄関たる横浜港の税関（国家機関）が、地方機関である県庁（「キング」の塔。49m）より低いとは何事かと税関長が難色を示し、51メートルに設計しなおしたというエピソードがあるとか。

景観を活かしつつ改修の手を加え、いまも役所として機能している。１階には資料展示室があり自由に入ることができる。入場無料。横浜港の歴史や税関の仕事がわかる。

横浜三塔のうち「ジャック」の塔。

横浜開港50周年を記念して発起され、市民の寄付によって創建された公会堂（当時の名称は「開港記念横浜会館」）。設計案を公募し、福田重義案をもとに山田七五郎・佐藤四郎が設計。関東大震災による内部焼失・復旧工事などを経ながらも戦争を生き延びた。現在も公会堂として利用されている。1998年には関東大震災で失われたドームの復元を行い、往時の姿を回復している。

「開港記念会館」とちょっと紛らわしい。こちらは歴史史料を保存・展示する歴史博物館。

外国為替を専門とする特殊銀行として1880（明治13）年に設立された横浜正金銀行（東京三菱ＵＦＪ銀行の前身の一つ）の本店として建設されたドイツネオバロック様式建造物。銀行の建築というものはそもそも堅牢にできているのが相場だが、この建物の圧倒的な存在感は、「世界三大為替銀行の一角」（あとの二つは香港上海銀行とチャータード・マーカンタイル銀行）と称するに至るこの銀行の威信を誇示してあまりある。戦後は東京銀行横浜支店として使われた。すごい支店である。

1964年、神奈川県が土地・建物を買収し、関東大震災で消失したドームを復元。神奈川県立博物館として開館した（都道府県立の総合博物館のさきがけ、らしい）。1995年に自然科学分野を分離・再編して現在は神奈川県立歴史博物館。公式サイトでは建物の解説も詳しくおこなっている。